私は実家の雑煮が嫌いだった。
具が少なくて、味も薄い。
餅と、菜っ葉が入っているだけの質素なものだった。
うちはしっかり煮るからなのか、餅はどろっとした食感になる。
それがあまり美味しいと思えなかった。
餅はしっかり歯ごたえがあり、「餅だよ!」と主張してほしいのだ。
そんなだったので、私は自分で雑煮を作るほどの熱意はなかったのだが、
私の愛読書「きのう何食べた?」で雑煮の作り方が載っていて、
それを見た時”なんて美味しそうなんだろう”という期待でそのページが輝いて見えた。
詳しい作り方は割愛するが、具は白菜、にんじん、大根、とりもも、
更にゆずの皮と三つ葉、もみのりまで乗せるのだ。
私の中の「雑煮」というものの固定概念が崩れるほど、具たくさんで美味しそうだった。
その年の正月たまらず作った。
私の品性は間違っていなかった。
なんて風味豊かなのであろう、それぞれの具からのダシが出て、
時たま香るゆずがとても上品だった。
それからは毎回その雑煮を作っている。