アレンジは許さない

納豆



お題の「納豆には何を入れますか?」を見て思い出した出来事がある。

 

私は納豆に関してはゴリゴリの保守派閥である。納豆にかけるのは付属のタレとカラシのみ。他の物をかけるとしたら市販の濃い口醤油しか許さない。

 

なので私の好みでこのお題を書こうとしたら5行目で日記が終わってしまう。

 

もし付属タレ以外の調味料を誰かがかけようものなら、窃盗を働いた輩に通報するが如く取り締まった。母が納豆に七味をかけていたのを目撃した際は、なぜそのような野蛮な真似をするんだと母を糾弾した。

 

当時それが大喧嘩に発展して、2日間にわたる戦争の末、「晩御飯抜き」と条約をつきつけた母に対して属座に私の全面降伏の運びとなった。国にとって食糧難は生死にかかわるのだ。

 

 

 

話はところ変わって、以前ふわっちというライブ配信者のアプリを見ていた頃、その配信者の女の人が、「私は納豆にはマヨネーズかけます。いやめっちゃうまいんすよ!」とほざいていた。

 

激震が走った。まっっったく正気と思えなかった。マジで言っているのかこの人はと、それ本当?とコメント欄に書き込むと、「いや騙されたと思ってやってみて下さいよ」と返してきた。

 

私には到底真似できなかった。そんなことをするなら死んだほうがましだとまで思った。しかし当時他のアレンジを一切許さず、変わった味を経験していない納豆素人童貞の私に少しの好奇心がむくむくと沸き上がった。

 

しかし私の納豆でそんな真似をすればそれまでの何十年を否定する羽目になる。どうすればいいんだと納豆のことなんかで葛藤していた。

 

ある日の朝、私が納豆を食べていると隣でも弟が納豆を食べようとしていた。

 

付属のタレも入れて、いざかき混ぜようとしているとき、私はきゅうりのサラダ用にテーブル上に鎮座していたマヨネーズを弟の納豆に噴射した。

 

「なにやってんだよう!」と当時小6の弟が泣きそうな顔で見てくる。私はすごい美味しいらしいよテレビでやってて、騙されたと思って食ってみなよと鬼畜配信者のように弟に諭した。

 

納得しきれない様子で「も~」と弟が納豆をご飯にかけて、一口パクっと食べた。疑惑と好奇心の入り混じった中でどう、おいしい?と聞くと弟は、「あ、意外と美味しい!」と言った。

 

”本当か~~~?”と思ったが、私の中の好奇心が勝ってしまった。納豆素人童貞の私が、スプーン一杯分私のご飯に弟の納豆をよそってみた。口に運んで咀嚼した。

 

 

 

 

マジで不味かった!!

 

口の中の納豆は何一つ調和せず、マヨネーズのクリームな感じが邪魔ばかりしていた。これは納豆ではない。かつて納豆だったゴミだと思った。

 

うまいうまいと言いながら食べる弟に心の中で”死んだ舌を持つ男”と烙印を押してお前など血のつながった兄弟ではないと吐き捨てて私は食卓を後にした。

 

あれ以来私は浮気はしないと心に決めて、今日も付属のタレを入れている。