普段住んでいるところの、同居人や周りに住む人の民度はとても大事だ。悪い人が一緒に住んでいたら、とても落ち着くものも落ち着かないだろう。
以前実家で飼っていたペットの記事を書いたが、今回はその続きの話を書こうと思う。実家で一番最初に飼われていたペットはカブトムシである。酒浸りの父に捕まり、黒霧島と命名されひと夏で亡くなってしまった。
今回登場するもう1種類のペットは、弟が近所の祭りの金魚すくいで取ってきた金魚であった。正確に言うと、弟は金魚を一匹も取れずに大泣きした結果、金魚すくいを主催している町内会の兄さんが父の知り合いで、「可哀そうだから一匹もっていきな」とお情けでくれた金魚であった。どことなくフグに似ているので、フクちゃんと名付けられた。
我が家に招かれたフクは来て数日はアイドルのように家族から持て囃されたが、金魚なのでお手をする訳でもなければインコのように喋りもしないので、その後は家族のほとんどが興味を急激になくし、取ってきた張本人の弟ですらフクには構いもせず外に遊びに出ていた。
しかし唯一フクを可愛がっていたのが母であった。毎日のエサやり、水槽の掃除を行いフクを甲斐甲斐しく世話していた。
しかもフクの住処は、当時どこで買ってきたのか知らないが、小型のブラウン管テレビくらいにでっかい水槽であった。一般ギョ庭ならば金魚鉢が当たり前の時代で、お金持ちの主人の大豪邸に住んでいた。破格の待遇である。
それから2年後、フクは広い宮殿のような住処で飯もたらふく食って成長した結果、ブクブクと太ってまん丸になっていた。もはや金魚なのか本当にフグなのかわからない風体をして、「この家の王様は私だ」と言わんばかりにひもQサイズのうんこを出して優雅な生活を謳歌していた。
しかしそれからフクのギョ生において重大な事件が発生するこになるとは、当人は思いも寄らなかったであろう。
季節は8月、夏祭りに家族で出かけた弟が再び金魚すくいで金魚を取ってきた。しかも今回は1匹だけでなく、なんと4匹も取ってきた。聞いたら弟は金魚すくいスキルの上達の為に、学校の図書館の金魚すくいのコツという本を借りて勉強したとのことだった。
こうなると当然新入りたちの行き先はフクの住処となる。予想外のシェアハウスを迫られたフクは迷惑以外の何物でもない。弟の金魚取りスキル向上を誰よりも恨んだに違いない。
それまで独身貴族を満喫して、同居人に気を遣うどころかご近所付き合いもせず好き放題暮らしていたのに、急にどこの輩とも分からないパリピ4人組が同じ家に越してきたのだ。
夜中に酒を飲みドンチャン騒ぎ、ゴミは分別せずに放置して、トイレットペーパーの芯は取り替えない。そんなやりたい放題、汚し放題の新入りたちに家をめちゃくちゃにされたフクは、ストレスがマッハで不眠のノイローゼになってしまった。
読者様はもうお分かりであろう。新入りたちが来てから3日後の朝、水槽の水面で仰向けになり浮かんでいるフクの死体が見つかった。享年2歳。
さほど家族の面々は悲しみに暮れない中、唯一可愛がっていた母は般若の如く怒り狂っていた。どれくらい怒っていたかというと「こんな奴ら焼いて食ってやる!!」と本気で新入りの金魚たちをコンロにかけようとしていた。
あまりフクの死について気に留めていたなかった弟だが、自分の成果物が焼かれようとしているのを見ると「やめて!せっかく取ってきたのに!」と母を止めていた。私はまったくもって新入りたちには思い入れはなく、むしろ金魚って焼いたらうまいのか?と好奇心の方が勝っていたため金魚にマヨネーズつけたらうまいのかな?と父に尋ねた。
結果的に、弟の反対により金魚4匹が晩御飯の食卓に並ぶことはなかったが、結局その後の世話は弟はやらずになぜか母親がやっていた。
フクは亡くなった翌日に丁重に庭に埋葬された。黒霧島の墓の横に「フクのお墓」と書かれたアイスの棒の墓石が建てられた。
あれから新入りがどれくらい生きていたか覚えていないが、ほどなくして亡くなったのだろうと思う。
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